2014秋のG1本番! そこで、テンジンショウグン、ダイタクヤマト、アメリカンボスほか多くの穴馬券を生み出してきた“平成の大穴男”こと江田照男騎手を直撃した!
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―テンジンショウグン355・7倍(98年日経賞)、ダイタクヤマト257・5倍(00年スプリンターズS)、ネコパンチ167・1倍(12年日経賞)と重賞だけでも単勝万馬券が3回。見事に大穴ジョッキーですよね。
江田 自分ではそういうつもりはまったくないんだけど、でも喜んでくれる人がいるなら嬉しいよね。
―デビューから振り返ってみると、1年目の夏にいきなり重賞初勝利(90年新潟記念)。このときも騎乗したサファリオリーブは15頭立てのブービー人気でした。
江田 あの頃は今の若い子以上に重賞に乗せてもらえる機会なんてないから、なんとかアピールしようと無我夢中で乗ったら勝てちゃった、という感じかな。
―その後はプレクラスニーとのコンビで、重賞3勝。メジロマックイーンの降着があったとはいえ、最年少(19歳)で天皇賞ジョッキーに。失礼ながらすごく華々しい若手時代じゃないですか。
江田 自分のことだけど、すごいよね。所属の田子冬樹(たご・ふゆき)調教師と、このとき乗せてくれた矢野照正調教師には感謝してます。でもこの少し後に、ちょうど重賞も勝ててない時期があるでしょう。腰を痛めちゃって、もう靴下をはくのもつらいぐらい。筋肉が足りないということなのでトレーニングをし始めたら、少しずつよくなって、そこからまたボチボチ勝ちだして。
―ちょうど、テンジンショウグンで勝つあたりですね。
江田 うん。あのときはもうだいぶよくなってた。
―江田ジョッキーの体調の変化がテンジンショウグンの勝ちにつながったと?
江田 いやいや、あのときは馬が妙に調子よくて。いつもは途中で手応えがなくなるから、「ああ、今日はいつ止まるのかな」と思いながら乗ってたら、手応えがいいままだから。これは勝てるぞ!と。
―すると、大穴のときはいつもそんな感じで?
江田 こういうのはたまたまで、いつもはいかに馬のいいところを出せるかを考えてますよ。頼まれるときに「ちょっと乗り難しいけど、手が合うと思って」と言われて、実際にいい結果を出せると自信にもなるしね。
―人気馬と穴馬とでは、勝ったときの感想は違います?
江田 1勝は1勝だから、勝ち星の数ということでの違いはないかな。人気馬は人気馬なりのプレッシャーとかあるけど、「期待に応えた」という達成感は、人気薄のほうが大きいね。その馬の長所を出せて短所を抑えられたということだから、これがハナ差の勝利だったりすると「いい仕事できた!」と思えますよ。
―江田ジョッキーで穴馬券を狙うとしたら?
江田 やっぱりコース形状から中山競馬場かな。東京競馬場だと馬の実力の比重が大きいんですよ。でも中山だとうまく展開で能力をカバーしたりとか、逆に能力を出しやすい展開に持っていきやすいかも。
―単勝万馬券の重賞勝ちも有馬記念のアメリカンボス(01年13番人気2着)も中山で。
江田 あの馬は、3-4コーナーでちょっと下がるところがあるんですけど、それさえ耐えられれば、いい脚を使うんです。そこを意識したらうまいこといきました。
―デビューして、来年で25年ですね。
江田 そもそも、こんなに長く続けてると思わなかったよね。同じ世代でほかの現役の騎手はみんな1000勝とかしてるけど、僕みたいのもまだまだ需要があるんで、自然体でいいパフォーマンスを見せたいと思ってます。
(取材・文/土屋真光)
●江田照男(えだ・てるお)
1972年2月8日生まれ、福島県出身。90年JRA美浦・田子冬樹厩舎所属でデビュー。通算1万3974戦859勝(中央・地方通算。2014年10月27日現在)